2001年の春、ぼくは住みなれた町を離れ、故郷にもどってきたのだ。
田園は休耕田だらけ、にぎやかな田園の風景はもうない!! なんてことだ。淋しいのう・・・
とにかく若い人がいないのだ。たまに見かけるのは、おばあさんの姿だけ。もくもくと草をとっている。ひょいと目があうと光る汗をたらたらながしながら、にかっと笑う。
ぼくもにかっとする。なんだか申し訳ないような、こんなおばあちゃんに働かせて散歩しているのが悪いような気がしてくる。
それからさ。ぼくが畑をやろうと決心したのは。だって、ぼくは力持ちのクマだぞ。おばあちゃんより、ずっとずっと若くてぴんぴんしてる。やってやれないことはない、てだれか言ってたよな。だけど、ハチさんがこわ〜い! もし、畑でハチさんに会ったら、ぼくは一目散に逃げるのだ。<ソウ、ソウ、ムニャムニャ>
やるんなら自然農で。
ミミズもオケラもジグモもうじゃうじゃいるふかふかの畑だ。
つくるんなら雑穀と豆。
小さいとき、いとこの家で雑穀のご飯をいただいたんだ。一度っきりだったけどさ、つぶつぶのご飯は白いご飯よりずっとおいしかったなあ。ぼく、大きくなったらあのおいしい雑穀のご飯を食べたいっておもってたんだよ。
それからね、友だちからきいたんだけどさ、ある農博士が電車でおばあさんと乗り合わせたんだって。おばあさんは手提げ袋の中から赤茶色のだんごをとりだし、うまそうに食べはじめた。朝つくってきたのだという。何のだんごか? ときくと、タカキビの粉だという。そのおばあさんは肌つやもよく、元気いっぱいで。ははあ! と農博士は納得したそうだ。県北の人はこういうものを食べているから、元気で長生きなんだと。
雑穀は美容と健康にもよく、子どものアトピーにもいいんだって。知らなかったなあ。
それに、冷害に強く、痩せた土地でも育つ、すぐれもの。ヤマセで苦しんできたご先祖様も、雑穀で飢饉を乗り越えて生きてきたのだそうだ。(ウンウン。ボクノDNAノ何割カハ雑穀ト豆ッテコトカナ??)
この道は畑への入り口
田んぼのへりを海風が吹いてくる この先がぼくの最初の畑
空がきれいだ! この空の下にぼくの畑がある